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京都地方裁判所 平成5年(行ク)7号 決定

申立人(本案事件被告)

田邊朋之(Y1)

右訴訟代理人弁護士

田辺照雄

崎間昌一郎

被申立人

京都市長 田邊朋之

本案事件原告

錦見美千代外三七六三名

右訴訟代理人弁護士

籠橋隆明外二一名

理由

第四 当裁判所の判断

一  本案事件は、京都市民である本案事件原告らが、次の差額金が京都市の損害であると主張して、地方自治法二四二条の二第一項四号の規定に基づき、京都市を代位して、被告田邊(申立人)、同池尻興産株式会社、同株式会社北摂カントリー倶楽部に対し京都市に対する損害賠償を請求する住民代位訴訟である。

右被告池尻興産、同北摂カントリー倶楽部、京都市との間の京都簡易裁判所平成四年(ノ)第九〇号損害賠償調停申立事件における調停に代わる決定に基づき、京都市長である被告田邊(申立人)らが京都市西京区大原野石作町一七五二番六山林外一四筆の土地及び同土地上の立木一切の購入代金として被告池尻興産、同北摂カントリー倶楽部に支出した金四七億五、六二三万一、六八四円のうち、右土地等の適正な価格である金四億〇、一九三万五、〇七一円との差額金四三億五、四二九万六、六一三円。

そして、被申立人は、右購入代金に関する財務会計上の行為をした行政庁であることが認められる。

二  行政庁の訴訟参加を定める行政事件訴訟法二三条は、地方自治法二四二条の二第六項、行政事件訴訟法四三条三項、四一条一項によって住民訴訟に準用される。

この参加の趣旨は、地方自治法二四二条一項所定の財務会計上の行為の違法な行為又は怠る事実に関する同法二四二条の二第一項各号の住民訴訟において、被告とされていない財務会計上の行為をした行政庁が当該行為又は怠る事実に関する攻撃防御方法を有している場合、当該行政庁を右住民訴訟に参加させ、訴訟資料を豊富にすることによって、適正な審理、裁判を実現することを制度の目的としたものである。

そうすると、本案事件の実質的な争点は、前示の被申立人がした財務会計上の行為が適法であるか否かという点にあると解されるから、右行為を適法であると主張する申立人の側に、これに関与した被申立人を参加させることが適正な審理、裁判を実現するという右訴訟参加の目的に合致する。

したがって、被申立人を本案事件の申立人側に参加させる必要があるというべきである。

三  本案事件原告らの意見に対する検討

1  本案事件原告らは、行政事件訴訟法二三条は被告である行政庁に「他の行政庁」を参加させるものであって、被告が個人である場合にこれに参加することを認めていないと主張する。しかし、同条は、規定上、地方自治法二四二条の二第一項各号のすべての類型の住民訴訟に準用されているし、前示のとおり、関係行政庁を攻撃防御に参加させ、訴訟資料の充実による適正な審理、裁判の実現を図るという同条の趣旨に照らせば、被告が行政庁でなく個人である住民訴訟についても、行政事件訴訟法二三条が適用そのものでなく準用されるのである。したがって、本案事件原告らの右主張は理由がない。

2  また、本案事件原告らは、行政事件訴訟法二三条の参加を認めると、自治体が本案事件の被告の側に補助参加できないと解すべきことと矛盾し、不合理であると主張する。

しかし、行政事件訴訟法二三条の参加は、前示のとおり、参加の利益の存否にかかわらず、訴訟資料を豊富にし、適正な審理、裁判を実現することを目的とするものであり、これと第三者に参加の利益がある場合に限り許される民訴法上の補助参加とは制度の目的が異なる。したがって、民訴法の補助参加を否定する一方で、行政事件訴訟法二三条の参加を認めることは何ら不合理ではない。

3  そして、前示のとおり、行政事件訴訟法二三条の趣旨に照らせば、被申立人を申立人の側に参加させるべきものであるから、被申立人を原告らの側に参加させるべきであるとする本案事件原告らの主張は採用できない。

第五 結論

以上のとおり、申立人の本件参加申立は、理由があるから被申立人を申立人のために参加させる。

(裁判長裁判官 吉川義春 裁判官 中村隆次 河村浩)

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